研究概要 |
(1)子育てしている家庭の父親の母親への協力が母親のストレスにどのような影響力を持つのか、(2)父親の協力が子どもの社会性の発達とどのような関連を有するのか、(3)父親の協力は父親自身の成長発達とどのように関連するのか、という3点を吟味するために、まず、児童を持つ父親と母親を対象に、家事や子育てに対する父親の協力を尋ねる質問紙(尾形,1993)、母親の精神的ストレスを測定する質問紙(田中,1995)、児童の社会性を測定するS-M社会生活能力検査、父親の成長・発達を測定する質問紙(柏木・若松,1994)等を実施して、検討を行った。そして、(1)父親の「夫婦間のコミュニケーション」への関わりが高いほど母親のストレスが低いこと、(2)父親の「家事への援助」が高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低のグループの子どもの社会性得点が高い、父親の「夫婦間のコミュニケーション」への関わりが高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低・「自己閉塞感」低のグループの子どもの社会性得点が高い、父親の「子どもとの交流」が高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低・「自己閉塞感」低のグループの子どもの社会性得点が高いこと、(3)父親の「家事への援助」や「夫婦間のコミュニケーション」の程度が高いほど、父親自身の成長発達の程度が高い、またその際、「専業主婦家庭」では「夫婦間のコミュニケーション」が、「共働き家庭」では「家事への援助」が高いほど成長発達得点が高いこと、などを見いだした。 次に、同様の調査を、幼児を持つ父親・母親を対象に実施した。そして、上記の目的(1)と(2)については、ほぼ類似の結果が得られたが、(3)については、父親の「家事への援助」が高いほど父親の成長発達が高いという結果が得られ、若干傾向の異なる結果を示した。これを含む両研究の結果の差異について、子どもの発達段階等の観点から考察を加えた。
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