研究概要 |
(1)子育てしている家庭の父親の母親への協力が母親の精神的ストレスにどのような影響を与えるのか、(2)父親の協力及び母親の精神的ストレス、夫婦関係のあり方が、母親の養育行動とどのような関連を有するのか、(3)父親の協力が父親自身の自我同一性発達とどのように関連するのか、という3点を吟味するために、幼児を持つ父親と母親を対象に、家事や子育てに対する父親の協力を尋ねる質問紙(尾形・宮下,1998の14項目に1項目を追加)、母親の精神的ストレスを測定する31項目(田中,1995)、夫婦関係を測定する29項目(大野・柏木,1992)、母親の幼児に対する養育行動を測定する30項目(田研・両親態度診断検査等を参考に作成)、父親の自我同一性発達を測定する質問紙(宮下,1987)等を実施して、検討を行った。 そして、(1)父親の協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」が高いほど、母親の精神的ストレスの「孤立感」の得点が低いこと、(2)母親の養育行動の「威圧的態度」には母親の精神ストレスの「集中力欠如」が、「拒否的態度」には母親の精神的ストレスの「孤立感」が有意な正の関係を示すこと、また、「親和的態度」には共働き家庭では父親の協力の「家事への援助」が、専業主婦家庭では夫婦関係の「共通の話題や趣味による関わり」が有意な正の関係を示すこと、(3)父親の協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」や「家事への援助」の程度が高いほど、父親自身のアイデンティティ発達の程度が高いこと、またその際、共働き家庭よりも専業主婦家庭の方が、両者の関係が顕著にみられることなどを見いだした。
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