研究I 商品の価格と競争の関係に関する素朴概念の取り上げ、大学生を対象に3種の調査を行った。調査1では商品の価格の決定者について尋ねた。その結果、被験者は商品にはメーカーによって定められた価格が存在するという素朴概念をもっていることが明らかになった。調査2では小売店が小売り価格を希望小売価格よりも高く設定した場合と低く設定した場合について、メーカーが圧力をかける行為の違法性について調べた。結果として、小売店が希望小売価格よりも高く設定するような場合には合法だとする素朴概念が確認された。更に、調査3では日常の経済現象に価格と競争に関する原理を適用できるか否かを探り、競争事態が明示的である場合には適用が可能であったが、暗示的な場合にはこの原理を適用できないことが明らかになった。また、市場経済における企業活動の主目的を適切に認識している者ほど、調査3の課題の正答率が高い傾向が見出された。以上の結果は山梨大学研究報告に掲載する。また、その一部は日本教育心理学会で発表された。 研究II 研究Iの調査3から経済現象に既知の説明原理を適用できない傾向が見られた。そこで、競争事態の明示性と現象の日常文脈性という2要因を取り上げ、これらの要因が説明原理の適用に関わるか否かについて調査を行った。その結果、競争事態が暗示的な問題状況や日常の文脈に埋め込まれた問題状況において、競争と価格についての説明原理を適切に適用できないことが確認された。現在、具体的な経済現象に適切な説明原理を適用させるような教授ストラテジーを解明するための実験計画について検討している。
|