2文字漢字語の情報処理のメカニズムを明らかにするため、語彙判定課題実験を行い、反応潜時を測定した。構成漢字の字頻度をコントロールし、漢字の連結価(ほかの漢字と連結して2文字漢字語が形成される語数)によって、(1)高連結同士から成る有意味語、(2)高連結漢字同士から成る無意味語、(3)低連結漢字同士から成る有意味語、(4)低連結漢字同士から成る無意味語の比較を行った。被験者は、学生32名であった。その結果、有意味語では、高連結価条件のほうが低連結価条件よりも平均24msec早く、逆に無意味語では、平均26msec遅いことが明らかになった。連結価の効果は、重回帰分析の結果からも示唆された。連結価は、有意味度を表すと解釈できる一方、高連結漢字語は、その語自体の頻度に加え、その語族に属する関連語が出現したときに、その語もある程度、活性化されると考えられる。その活性化を数量化すれば、第2頻度として本来の頻度に加算され、メンタルレキシコンの構成の新しい要因となることが指摘された。 この連結価は、有意味度を表す点で学習難易の決定要因とも考えられ、現在、漢字学習率とのかかわりを検討中であり、国立国語研究所の「生徒児童の常用漢字の学習」のデータの分析を行っている。さらに英語における語の情報処理および学習に応用する可能性を模索中である。
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