研究概要 |
本研究は,学校週5日制の部分的実施に伴い,現在の学校での子どもたちの学習環境が著しく疎外されつつある現状,つまり新学力観の育成をめざしながらも,カリキュラムが現状維持のままスタートした中での児童生徒,保護者,教師の学習指導面の援助ニーズを解明し,それに基づき,不登校やLD児をはじめとする学習不適応の要因を明らかにするとともに,現在の試験的に学校現場に導入されているスクールカウンセラーに今後必要とされる力量は何かを提案することを目的として行われた。 全国各地の小学校・中学校・高等学校の児童生徒1036名,保護者984名,教師431名,計2451名のデータを基に検討した結果,児童生徒では授業内容をよく理解しないまま授業が進むことを悩みの上位に挙げ,教師も授業において補習や個人指導の時間確保が難しい現状を指摘し,特に障害児学級を担当する教師で援助ニーズが大きいことが明らかになった。他方,保護者では授業や学力保障に対する懸念や不安を示していることがわかった。 こうした結果から,2002年より学校週5日制が完全実施されるにあたり,学校現場に導入されたスクールカウンセラーの役割の一つとして,児童生徒の学習面の支援体制,例えば,児童生徒の学習カウンセリングや教師の学習指導のコンサルテーションが考えられ,そうした力量を備えたスクールカウンセラーを養成する必要性があることが示唆された。 さらに,こうした学習指導のコンサルテーションに有用な知見が学習心理学や認知心理学の領域でどのくらい蓄積されているかもまとめ,とくに援助ニーズに応じたコンサルテーションのためのデータベース蓄積の重要性が指摘された。
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