本年度は2つのことを行った。第1は、変化に対する心理的抵抗についての文献的研究である。心理的抵抗の分類を試みた。 第2は、質問紙調査に基づく実証研究である。調査対象は、合弁の化学繊維メーカー54名の管理者であった。管理者に、自分があずかっている部署において、現在、どのくらい交流型リーダーシップおよび変革型リーダーシップを行使しているかを尋ねた。あわせて「どのくらい心理的抵抗がみられるか」も回答してもらった。そして1年後にも再び、交流型および変革型リーダーシップをどのくらい行使しているかを測定した。分析結果は、主に次の2つのことを示していた。 (1)交流型リーダーシップは、自部署内の心理的抵抗を感じる度合いにかかわりなくほぼ一定であった。ところが変革型リーダーシップについては、心理的抵抗をより少なく感じている管理者ほど、1年後において増加していた。 (2)変革型リーダーシップの向上と特に関連が強かった心理的抵抗は2つあった。ひとつは、変える特別の理由がないという心理に由来する抵抗、すなわち「現在のルーティンや慣行を何もあらためて変える必要はないのではないか」、「変革はうちにはなじまないのでは……」、「上司の支援が期待できない」などであった。 もうひとつは、積極的な風土のなさに起因する心理、すなわち「変革のプランがない」、「変革について十分な議論がなされていない」、「うちには変革をしたとしても報償システムがない」、そして「関連する部署が多すぎる」などの抵抗であった。
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