本年度は、心理的抵抗について次の2つのことについて検討分析し研究成果を得た。 第1に、わが国の企業組織651社を対象とした調査を行った。組織は3つの構造、すなわちハード構造(事業構造、組織編成、人事や待遇等の制度など)、セミハード構造、そしてソフト構造を持っていると考えることができる。これらのうち、ハード構造の変革にあたる組織編成の改訂、および各種制度の改訂に着目した。そして、(1)まずそれらの改訂が進められている状況を明らかにした。組織のフラット化やプロジェクトチーム化、および目標管理制度や年俸制の導入が、多くの組織において進み、わが国の慣行的制度の見直しと改定が進捗していることが示された。また、(2)それらの改訂は導入するだけでは効果がなく、定着することではじめて業績(売り上げの伸び、経常利益)との間にかなり明確な関連性が生まれることが示された。さらに、(3)ハード構造改訂のプラス効果を規定する組織風土(ソフト構造)の特性についても明確にされた。これらの分析結果を基に、心理的抵抗の克服の問題について議論していく。 第2に、組織変革のうち、業務遂行方法の見直しの一環としての社内LANの導入に注目した。そして、そのLANシステムがどのように部署内で成長し、定着し、そして成果を上げるかについて営業チームを対象として検討している。これは換言すれば、組織成員の新規の制度やシステムに対する心理的抵抗が克服されていくプロセスとみることができる。これについては、現在より詳細な解析を進めているが、部署のリーダーが設定するフレイミングや新システムの持っているコスト/メリットの比較が、定着と効果を左右していることが窺えた。 これらの研究成果を中心に、著書『基軸づくり-創造と変革のリーダーシップ』も出版した。
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