本研究では、まず第1に、変化に対する心理的抵抗について実証研究を行った。調査対象は化学繊維メーカー54名の管理者であった。管理者に交流型および変革型リーダーシップの行使度を尋ねた。あわせて「自職場にどのくらい心理的抵抗がみられるか」も回答してもらった。そして1年後にも再び、交流型および変革型リーダーシップの行使度を測定した。主な結果は、(1)交流型リーダーシップは、自部署内の心理的抵抗を感じる度合いにかかわりなくほぼ一定であった。変革型リーダーシップは、心理的抵抗をより少なく感じている管理者ほど、1年後に増加していた。(2)変革型リーダーシップの向上と特に関連が強かった心理的抵抗は2つあった。ひとつは、変える特別の理由がないという心理に由来する抵抗であり、他のひとつは、積極的な風土のなさに起因するそれであった。 本研究では第2に、わが国の企業組織651社を対象とした調査を行った。組織は3つの構造、すなわちハード構造(事業構造、組織編成、人事や待遇等の制度など)、セミハード構造、そしてソフト構造を持っていると考えることができる。これらのうち、ハード構造の変革にあたる組織編成の改訂、および各種制度の改訂に着目した。そして、(1)まずそれらの改訂が進められている状況を明らかにした。組織のフラット化やプロジェクトチーム化、および目標管理制度や年俸制の導入が、多くの組織において進められ、わが国の慣行的制度の見直しと改定が進捗していることが示された。また、(2)それらの改訂は導入するだけでは効果がなく、定着することではじめて業績(売り上げの伸び、経常利益)との間にかなり明確な関連性が生まれることが示された。さらに、(3)ハード構造改訂のプラス効果を規定する組織風土(ソフト構造)の特性についても明確にされた。
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