研究概要 |
アジア地域を対象とした原風景の調査を行うことを目的とした本研究で、平成11年度には次のような研究を行った。 研究(4)韓国の成人を対象とした個人インタビュー及びグループインタピューのデータを基に、とりあげられた原風景を構成する空間要素を分類し、カテゴリーを作成した。さらに空間特性を視覚的に表現するために、済州島の写真集を収集し、その中から上記のカテゴリーごとに典型的な風景映像を抽出した。これらの成果は、呉宣児・南博文(2000)「語りから見る原風景(2)-韓国済州島の空間的特性を中心に-」(九州大学心理学研究第1巻1号,123-138)にまとめられた。 研究(5)共同体レベルでの原風景の表出を調べるために、日常的な場面におけるグループインタビューの手法を用いて、地域の場所アイデンティティと原風景との関係について分析を行った。共同語りの詳細な分析を通して、原風景の共有と意味づけが、語り合う場の中で共同生成されること、さらに共同語りにはいくつかの役割の分化があり、参加者間の相互関係によって原風景の話題が展開することが明らかになった。 上記の結果を最終報告書としてまとめている。原風景の基礎構造について心理学的な観点からアプローチし、「原風景現象」が文化的に構成されることを、ミクロな相互作用の分析、特に語りの分析を通して明らかにしたことが本研究の主要な成果である。
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