1)割合に関するインフォーマルな知識 研究1で、子どもは、学校で正式に割合を学習する以前に、割合に関するかなり豊かなインフォーマルな知識を獲得していることが、実証された。その中で、子どもは、割合の基本となる意味、割合における合成・分解の意味などを獲得していた。 研究2では、割合に関して公式的な教授をまったく受けていないにも関わらず、子どもは、割合に関する第2用法の問題を解決することができることも、証明された。たとえば、割合を学習していない5年生に〔40個のおはじきの90%はいくつでしょう?〕といったかなり難しい問題を提示した。この問題に対して、彼らは、インフォーマルな方略を利用して、完全な正答をえたものが11%、ほぼ正答に近い35という答を含めると、45%の子どもが正答に達していた。 こうした解決は、インフォーマルな方略によってもたらされていることも、分かった。つまり、割合が100をベースにしており、その1%または10%などを基に90%を構成するといった方略による解決であった。 2)割合を学習した後の困難性 研究3では、割合を学習した後の子どもが、なぜ割合に困難性をもつかを検討した。まず、割合で用いられる用語、つまり基にする量や比べる量といった用語を理解していないのではないかということが、考えられる。このため、問題を与えて、どの数値が基にする量で、どれが比べる量かを同定させた。その結果、割合の第1用法では47%の正答率、第2用法では60%、第3用法では36%の正答率となった。こうして、子どもは問題を与えられても、問題における要素の同定が困難であることが分かった。これであれば、問題を表象する以前の問題があることが、示唆された。 研究4では、割合を学習し終えた6年生に割合問題を与え、どのような方略で問題解決をおこなうかを検討した。その結果、教室で学習した公式による解決を利用したのは、わずか7%のみの子どもであることが判明した。残りの子どもは、いくつかの演算をおこない、答が何となく違うということで、計算を繰り返す子どもなどが、35%にも上がっていることも明らかになった。
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