今年度の研究ではタイプA行動パターンの特徴がその個人の対人関係における構えと関連するものではないかという点を検討することを目的として調査を行った。 学生被験者を対象にタイプA行動パターン測定用の質問紙であるJenkins Activity Survey(JAS)学生用、怒りの表出に関する質問紙であるState Trait Anger Expression Inventory(STAXI)、アレキシサイミアを測定するToronto Alexithymia Scale(TAS)を施行した。さらに個人が自分と他者との関係について肯定的あるいは否定的のどちらを強く認知しているかという基本的構えを測定するための質問紙であるOKグラムを施行した。 タイプA行動パターンとアレキシサイミア、怒りの表出に関する質問紙の相関分析を行ったところ、概ね去年の結果を支持する成果を得ることが出来た。さらにタイプA行動パターンとOKグラムによって測定される人生の基本的構えとの関連性を検討したところ、タイプA行動を示す被験者は自己肯定-他者否定的な構えを持ち、またその一部は自己否定-他者否定的な構えを持つことが明らかとなった。このような点からすると、タイプA行動パターンの特徴とされる強い達成努力、時間的切迫感、攻撃性などが人生に対する否定的な構えから生じたものであると考えることが出来る。さらにこのような否定的な構えをもつことの原因について考察すると、これらは人生初期の対人関係に起因することが多いと推察される。 本研究の基本的テーマであるタイプA行動の情緒性の乏しい怒りと敵意というものが基本的信頼関係を形成すべき人生初期における自己否定、他者否定などの体験を通して形成されるものであろうことが示されたといえる。
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