本研究では、虚血性心臓疾患の危険因子とされるタイプA行動の特徴である怒りや敵意が、情緒性の乏しいアレキシサイミア的な要素をもつという点を検証し、それがどのような生育歴上の問題と関連しているかについて交流分析における諸概念を用いて検討することを試みた。 学生被験者を対象にタイプA行動測定用の質問紙であるJAS学生用、怒りの表出に関する質問紙であるSTAXI、アレキシサイミアを測定するTASの質問紙を施行した。STAXIの因子分析では、独自に怒りの表出をためらうことを意味する因子と怒りの行動化の因子が抽出された。またタイプA行動を持つ者は、感情の高揚から起こるような怒りの表出が乏しいことが示された。タイプA行動を持ち、アレキシサイミア的な傾向を持っている被験者は単純な怒りの表出よりも、対象が不明確で衝動性の強い反社会的行動を示しやすいことが明らかとなった。またタイプA行動と人生の基本的構えとの関連性を検討し、タイプA行動を示す被験者は自己肯定ー他者否定的な構えを持ち、またその一部は自己否定ー他者否定的な構えを持つことが明らかとなった。 つぎに交流分析の中で用いられる、ラケット感情、禁止令、人生脚本といった各個人の人格形成に影響を及ぼし、また人生のあり方に影響を及ぼすと考えられる諸特徴を測定するための質問紙を用いて、タイプA行動と交流分析に基づくそれらの特徴を検討した。その結果、タイプA行動とラケット感情との関連性が示された。さらにタイプA行動と禁止令、人生脚本との部分的な関連性は示唆されたが、明確な結論を得るには至らなかった。今後の課題として、さらに生育歴や親の養育態度との関連性を検討すること、またラケット感情、禁止令、人生脚本の測定方法をさらに洗練させて行くことが必要と考えられる。
|