研究概要 |
本研究は,学級担任教師のリーダーシップを強化するリーダーシップ・トレーニング技法の開発を目的とする実践的研究である.本研究は3カ年計画の最終年度として次のような研究を実施した. 中学校の学級担任教師のリーダーシップ・トレーニング技法の開発のために,福岡県田川市の教育委員会の協力を得て,学級のグループ・ダイナミックスと当該学級の担任教師のリーダーシップを把握する調査を実施した.第1回調査は,平成11年6月下旬に,5中学校の1,2年の生徒(15学級,489名)を対象に実施した.調査内容は,担任教師のリーダーシップ行動(24項目)とスクール・モラール(26項目),生徒の交友関係,教師のストレス,生徒のストレス等である.教師のリーダーシップ測定項目は,三隅・矢守(1989)のPM測定項目を再度因子分析して22項目を採用した.スクール・モラール項目は,学級連帯性,規律遵守,学習意欲,学級雰囲気の19項目である.P,M2因子を組み合わせた4タイプ(PM,M,P,pm)とスクール・モラールとの関係は,従来のPM研究と一致して,スクール・モラール4因子とも,リーダーシップの効果性は,PM>M>P≧pmの順位であった.PMタイプとストレスの関係は,PM>M>pm≧Pという結果であった.この関係は非常に強く,数量化理論第III類のパタン分類においても,はっきりと確認された. これらの結果を基礎として7名の教師を参加者として,8月20,21日に2日コースのリーダーシップ・トレーニングを実施した.内容は,講義,データ・フィードバック,学級分析,自己分析,集団討議,行動目標決定,集団決定である.学級における実践期間は,平成11年9月〜平成12年1月である.1ヶ月単位の学級におけるリーダーシップ行動実践,実践行動の振り返り等の5ラウンドからなる.12月初旬に第2回調査を実施し,その結果をトレーニング終了後の平成12年2月5日にトレーニング効果としてフィードバックした.毎月,リーダーシップ行動の実践,実践行動の振り返りのレポートを課した. 第2回調査データで,参加学級と非参加学級間に学級雰囲気といじめの項目で有意差があり,トレーニングの効果が見いだされた.
|