2方向分析モデルは、理論的には3項強化随伴性モデルを基盤にしているが、個人の行動分析-行動変容プログラムと環境分析-環境変容プログラムを同時的に用意するという点に、その独自性を求めることができる。すなわち、「個人の行動が変容すれば、その個人を取り巻く周囲の環境の変容確率も増大し、また、個人を取り巻く周囲の環境が変容すれば、個人の行動の変容確率も増大する」という両方向的な効果が期待されることから、対応困難な発達障害の強度行動障害について包括的な分析枠組みになり得ると考えられる。この検証のため、平成9年度から平成11年度にかけては以下の点について検討した。 1.環境分析-環境変容プログラムの検討 発達障害者を取り巻く施設環境の随伴性を分析し、その随伴性に対応した環境変容プログラムとして、「正の強化の適正配置」に則った4領域28項目から成るセルフ・モニターリング法を1年間にわたって組織的に導入した。その結果、本法は組織的に施設職員の処遇行動の質を有意に高めるともに、入所者の行動に広範かつ有意な改善をもたらすことが示された。 2.行動分析-行動変容プログラムの検討 指導困難な強度行動障害(例:自傷行動、他傷行動、破壊行動)をもつ発達障害者12名の行動分析を行い、その随伴性に対応した個別プログラムを作成し、順次その適用ならびに追跡を行った。 3.効果の測定 環境変容プログラムと行動変容プログラムそれぞれの効果判定の他に、それぞれが強度行動障害に及ぼす効果も測定した。その結果、両プログラムによって12名の強度行動障害が激減し、特に12名中9名においては強度行動障害得点がゼロ・ゼロ近似水準まで激減することが示された。このように2方向分析モデルの劇的な有効性が立証された。
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