太平洋戦争(第二次世界大戦)中に行なわれた小学校児童の集団疎開の経験を、家族との分離経験ととらえ、その経験が成長後の行動、とくに現時点における社会的な行動とどのように関係しているかを、学童集団疎朗の非経験者との比較によって検討しようとした。 年齢の最頻値がともに66歳の、学童集団疎開経験者男女合わせて45名と、非経験者男女合わせて106名を対象とした調査の結果、学童集団疎開経験者は、非経験者にくらべて、引退後の今後の生活の楽しみに「他者との交際、人間閧係」を挙げているものが、著しく少数であることが明らかになった。 また、戦時中の学校生活で、今日「いじめ」とされる原因の不明な攻撃を受けた経験があることを見出し、「いじめ」が必ずしも現代的な現象でないことを指摘し、「いじめ」発生の機制を同一性形成の危機という視点から考察した。
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