本研究は、今日の日本の国際化、多文化化状況の中で、外国籍児をめぐる問題に焦点を当てた平成4年から現在に至る一連の研究の一部である。理論的背景としては、外国籍児・者の日本文化への一方的適応ではなく双方向的社会文化的認識発達の可能性の検討を行っている。S県 W市の複数保育園・小学校の長期フィールド研究を継続するなかで、外国籍児をみぐる様々な角度からの問題が研究の射程に浮上してきたため、その解明を目的とした研究計画が幾度かの修正を加えて構成され、実践に移された。平成10年度の研究は11年度以降に引き継がれ現在進行中であるが、S県 W市の家庭、学校、地域活動、メディアの4フィールドから社会文化的認識発達と変容について多角的に捉えようとしている。平成9-10年度の研究のまとめである本報告は、分析方法はマクロな社会的関係分析とミクロな認知過程分析である。前者では、外国籍児を巡る社会的ネットワーク及び社会的相互作用行動の分析を聞き取り調査およびビデオ分析によって行い、後者では異文化性に関する意識調査およぶビデオの微視分析を行っている。結果は、4フィールド全てにおいて、日本における子どもの異文化接触の問題に対処するためには、単に外国籍児の適応という一方向的観点ではなく、日本児や教師の社会文化的認知変容を含む双方向的観点からの教育や環境整備が必用なことを示唆している。本報告書では、特に人を呼ぶ、または支持するこばの使用に焦点化し、社会的相互作用分析によってコミュニケーションネットワークに反映された社会文化的認識の変容を検討した。
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