研究概要 |
精神分裂病は、初め早発性痴呆と呼ばれたように痴呆化すると考えられた。しかしその後必ずしも全ての患者が痴呆化するわけではないこと、さらに障害の特徴から精神分裂病に名称変更された経緯がある。とはいうものの、その後も患者の認知障害と老人の精神機能低下との類同性が考えられてきた(Saccuzzo,1997)。最近のモデルをまとめると大きく二つに分けられる。ひとつは、認知障害は分裂病の発病とともにあらわれ、その後加齢の影響を受けないとするもの(Goldberg,et.al.,1992;Goldberg,et.al.,1993;Rund,1998)。他方は、患者の認知障害は加齢によって影響を受けるとするものである(Mcdowd,et.al,1993)。われわれ(横田ら、1998)は記憶テストを使用し健常老人の記憶機能の加齢的影響を検討し、短期記憶・ワーキングメモリーに関する機能が長期記憶機能に比べ加齢の影響を受けやすいことを明らかにした。しかし分裂病患者ではそうした機能的な低下よりむしろ物語の記憶のように意味記憶に関して障害が見られていた(横田・内藤、1996)。ただ、患者の記憶障害に関しては、加齢を変数に入れていない。そこで今回、60歳以上の入院中の分裂病患者(東京都下1精神病院、群馬県下2精神病院)を中心に、横田記憶テスト、GHQ、バウム・テストを実施し、記憶機能を含めた認知機能障害が、加齢モデルによって説明可能かどうかについて検討している。
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