コンピュータネットワーク上での対人関係の形成・維持過程と、そこでの情報が個人の意思決定に及ぼす影響過程を明らかにするために、以下の3種類の調査を実施した。 1 パソコン通信の電子会議室の中で、創設以来100以上の発言のあるフォーラムの中から12会議室を抽出し、各会議室のログの内容分析を行った。その結果、(1)積極的発言が特定の少数のリーダーに偏ったコミュニケーション構造の会議室で、かつリーダーが新規参入者に積極的にコメントをつける場合には、新規参入者が容易に会議室にとけ込み発言しやすくなる、(2)参加者の多い会議室内には小集団ができあがり、そのリーダー同士は発言しあっても、フォロア-は自分の小集団のリーダーとしか交流しない、という過程が明らかになった。 2 パソコン通信の育児に関する電子会議室のログを内容分析したところ、(1)ログの中で最も多いのがサポート的内容であった、(2)中でも情報的支援が最も多く、次いで情動的支援であり、評価支援や道具支援はほとんど見られなかった、(3)表情文字が26%のログに見られ、電子コミュニティの維持に活用されている傾向が認められた。 3 全国規模の女性を中心にした「オンラインショッピング」のメーリングストの参加者を対象にオンラインアンケート調査を実施した。(1)このメーリングリストを設立した少数の人の仕事や趣味での既存の弱い紐帯を通じて口コミで参加者が増加していく、(2)中心メンバーがいつも共通の目的を持たせるような話題提供やコメントを行うことで電子コミュニティを維持している、(3)オフラインミーティングを行うことで強い紐帯を形成している、(4)参加者はメーリングリストでの書き込みを信頼し、それに基づいて実際にオンラインショッピングを実施している人の割合が多いことが明らかになった。
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