1 山田村調査:富山県山田村をケーススタディとして取り上げて、村役場や住民に聞き取り調査を行った。その結果、(1)「パソコンで何をしたい」という住民の明確なニーズがない状況でパソコンを希望全戸に無料配布しインターネットを接続するという「上からの情報化」政策では、元々コンピュータネットワークに関心や知識があって積極的に利用する住民と関心のない多くの住民の間で情報格差が広がっている、(2)利用を促進するためのサポート組織としては、地縁や血縁による既存のネットワークや特定の個人よりも、共通の目標や認識を持つ自主的グループ(村外を含む)を核に組織化した方が効果的である、(3)利用者は、従来あまり交流のなかった村民と共通の意識や趣味を見つけて地域を再認識したり、村外の人との交流を通じて村の良さを再認識して愛着心を持つなど地域コミュニティ意識が育つ可能性があることが明らかになった。 2 横浜市民調査:横浜市民を対象に2段階層化抽出法により1600名を抽出し、1998年11月に郵送調査を実施した。その内容は、(1)パソコンの購入過程、(2)インターネットの普及過程(利用者と非利用者の比較)、(3)インターネット利用者における利用実態とそこで形成される対人関係に分類される。重要な結果は、(1)パソコンやインターネットの採用の規定因として、情報環境要因(たとえば、身近にサポートしたりインターネットについて話せる他者がいる)が重要である、(2)元々対人的なコミュニケーションの嗜好が高い人がコンピュータネットワーク上でも積極的なコミュニケーションを行っている、(3)「現実社会で強い紐帯を持ちそのサポート機能に満足している人はネットワーク上で強い紐帯の対人関係を形成しない」という仮説は支持されなかった。今後さらに、現実社会とバーチャル空間での対人関係の関連性については検討を必要とすることが明らかとなった。
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