本研究は、男子学生を対象に、MMPI新日本版の基礎尺度値と、構成概念の明確な3種の心理学的測度(FNE、主張性尺度、およびCISS)との相関関係を明らかにし、従来のMMPIの解釈仮説がMMPI新日本版において矛盾するものであるかどうかを吟味したものである。以下の結果は複数の対象者集団で安定した値を示した関係である。 FNEと正の相関の高い尺度は、第7、第0、および第2尺度であった。また、負の相関の高い尺度は、K尺度であった。 主張性尺度と高い相関値を示したMMPI基礎尺度は、第0尺度、第2尺度、および第7尺度であり、すべて負の相関である。 CISSの課題優先対処尺度と有意な相関が安定して認められたMMPI基礎尺度は、第0尺度(負の相関)、第2尺度(正の相関)、および、第9尺度(正の相関)であった。CISSの情緒優先対処尺度と有意な相関が安定して認められたMMPI基礎尺度は、K尺度(負の相関)、第7尺度(正の相関)、F尺度(正の相関)、および、第6尺度(正の相関)であった。CISSの回避優先対処尺度と有意な相関が安定して認められたMMPI基礎尺度は、第9尺度(正の相関)、および、第0尺度(負の相関)であった。 以上の結果はすべてMMPIの解釈仮説と矛盾するものではなく、MMPI新日本版の結果に従来の解釈仮説を適用するひとつの根拠が与えられた。しかし、対象とした被検者群によって相関値が大きく変動するMMPI尺度も認められた。 今後、相関研究以外のアプローチを用い、学生集団の基礎率を考慮に入れたMMPIの解釈仮説の検討が必要になると思われる。
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