研究概要 |
人の社会性の発達において、相手をどのようにとらえているかは、協調関係を築く上で重要である。幼児からのいくつかの発達段階にある被験者において、仲間外れにする側とされる側において分かれた性格・生活態度の違いによって、PDゲーム行動や、ゲームを通しての対人・自己認知にどの様な差異が現れるかを調べた。実験計画は、性格特性2(仲間外れにされやすい<=>されにくい、あるいは、仲間外れをしやすい<=>しない)X年齢5段階(6,8,10,12,20歳)X対戦相手の戦略2(random,gradual)の3要因計画。被験者:幼稚園年長児、小学校2,4,6年生、それぞれ24名及び、大学2年生42名、計138名。装置:教室にノートシパソコン8台を持ち込み、その場でケーブルによって、相互に接続を行った。手続き:協調,裏切りという言葉を使わないでPDゲームを理解してもらうために、新たな話を設定し、教示に当たっては、それを補足する絵カードを使った。その結果、仲間外れをしやすい<=>しにくい特徴で、データを分けても、それに関する有意な差は見いだせなかった。しかし、仲間外れにされる<=>されにくいでデータを分けると、6歳児の仲間外れにされにくい群が、仲間外れにされやすい群よりも、意地悪と感じるgradual戦略に対して有意に多く協調関係を示すことが示された。しかし、そうは感じないランダム戦略に対しては、差がなかった。そのほかの年齢でも、仲間外れに関して差異は見いだされなかった。また、対人認知において、仲間外れにされにくい6歳児だけが、仲間外れにされやすい群よりも有意に相手を仲良しで、素直だと感じていることがわかった。こうしたデータは、まだ、注意深く詰め、さらに低学年のデータも必要となるが、あえて解釈するなら、6歳児までの伸びやかな遊び空間の中で、仲間外れにされてないと感じているものだけが豊かな協調的人間関係を築き上げられ、同じ6歳児でも、仲間外れにされていると感じてしまうと、小学生以上の同じ、仲間外れにされてもかまわないような耐性をみにつけてゆくことが示唆される。
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