運転者が運転中に見たこと、考えたこと、判断したこと、操作したことをすべて、実況放送のように、口に出して語るコメンタリー・ドライビング法(言語報告運転法)の運転者教育への有効性を実証的に検討するために本研究が企画された。 平成9年度は本研究の初年度に当たり、コメンタリー・ドライビングに関する文献および関連文献の精査と予備走行をもとに、2つの予備実験を実施した。 予備実験1では、約20Km・約30分走行の予備実験コースを一般道路に設定し、大学生を中心とするドライバー10名に、各3回ずつコメンタリー・ドライビングを行わせ、運転中の前景とコメンタリー内容を8mmビデオに収録した。コメンタリー内容を分析すると、対向車や歩行者や自転車など動いている対象、駐車車両など止まっている対象、交通標識は比較的コメンタリーされてくるが、自己の運転行動とその変化のコメンタリーは比較的少なく、さらに相手の動静や行動予測のコメンタリーにはある程度の運転経験を必要とすることが明らかになった。 予備実験2では、起こしやすい事故のパターン10種類(例えば、右折時における対向車との事故、T字路での不確認事故など)をもとに、運転席から見た運転中の前景を8mmビデオに収録し、10場面を含む5分間のコメンタリー・ドライビング刺激ビデオを4種類作成した。大学生ドライバー男女各5名、計10名に1種類ずつ3〜4日間隔で4種類の刺激ビデオについてビデオ画面を見ながらコメンタリーさせた。コメンタリー内容をもとに得点化すると、学習効果は明らかであり、効果的な教育手法の可能性の示唆が得られた。
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