研究概要 |
小学生用・中学生用5因子性格検査の作成にあたり,平成9年度において小学生用5因子性格検査(FFPC)の作成と標準化を行った.3386名の小学生を対象にして得られたデータの因子分析の結果,40項目をFFPC項目として決定した.ノミネート法と再テスト法によりFFPCの妥当性と信頼性の確認が行われた. 平成10年度では中学生用5因子性格検査(FFPS)の作成と標準化を行った.中学生1800人を対象として収集したFFPCデータの項目分析から,各因子12項目,計60項目から成るFFPSの最終版を作成した.5因子の個々の特性の概念に関する記述反応をSCT(文章完成法)方式で求め,質問紙法および投影法の両測定法で得られた5因子に関する反応間の関係を見ることにより,収束的・弁別的妥当性の検討を行い,その結果FFPSの概念的妥当性が確かめられた.再テスト法による信頼性の検討では,尺度として十分な安定性が認められた.以上の手続きを経て,FFPSの作成と標準化を完了した. 平成11年度では作成した尺度を利用した発展的研究として以下の2研究を行った. 研究1では,近年,子どもの行動傾向として問題となることの多い攻撃性を取り上げ,児童の攻撃性と5因子性格特性との因果関係の分析を行った.その結果,攻撃性4変数に影響する性格5変数の結合はそれぞれ特有のパターンが示され,細分化された児童の攻撃性の概念をある程度明確にすることができた. 研究2では,児童の性格特性がストレス反応におよぼす影響の分析を行った.共分散構造分析を用いて性格特性とストレス反応との因果関係の分析を行った結果,情緒性は抑鬱・不安および身体的反応を生じる要因となり,また,外向性は不機嫌・怒りおよび無気力を生じる要因となり得ることが明らかになった.
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