平成9年度は、特に、(1)システムの試作、(2)タイピング結果の自動解析・評価システムの開発、(3)解析・評価結果の練習者へのフィードバックシステムの開発、及び(4)訓練課題(データ)の選定が主題となったが、(4)との関連において、視覚障害者のタイピングの際の誤りとスピードについて、詳細な検討を行った。 結果は以下の通りであった。タイピング文節数は、90文節から250文節と被験者間の違いが認められ、コンピュータの使用経験の違いを半年間では吸収できないことが示唆された。また、このこととは別に、タッチメソッドが有利というわけでもなく、弱視者のように画面が若干でも見ることができる場合は見てしまう事があっても、大学生としての文書処理には大きな影響はないといえよう。更に、変換の誤りについてみると、全盲学生群では0〜7.55%、弱視学生群では0〜11.4%であり、同レベルの水準ということができる。 この種の典型例として、「潜る」「僅か」などを挙げることができる。それぞれ全くの誤りではないが、国語辞典によると仮名書きが適当と記されており、原文においても仮名で記されているものである。変換キ-を押せば殆ど使われないような文字でも記すことができるという、コンピュータによる文書作成に特徴的な現象である。 これらを参考にして、訓練データの作製を開始するとともに、システムの試作と、訓練データの組み込みを現在実施中である。システムについては、予算の関係により、ほとんどを現有機器を用いて、完成できるよう努力中である。なお、そのために人件費等の出費が予定を上回っているが、研究完成に支障はないと思われる。
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