語彙の出現は非言語的コミュニケーションから言語的コミュニケーションへの発達変動期にあたり、認知発達スクリーニング上、発達障害の発見等に不可欠な情報である。本研究では、集団一斉健康診断の行われる生後18ヶ月の言語発達スクリーニングに焦点をあて、初期の語彙獲得がどのような変数で変化するのか、周産期リスク・身体運動発育(特に口腔機能・上下肢偏側性)・認知発達段階・人的環境等により、どの程度個体差が生じているか、語彙出現までの発達変動因の解明を目的とする。 さらに同じ被験児群に24ヶ月でも発達調査書の記入と語彙チェックを依頼し、18ヶ月から24ヶ月にいたる変化を確認することで、18ヶ月時点の語彙獲得数および発達特性のもつ発達予測性を検討する。このような個人差研究の成果のもとに、言語発達スクリーニングでの発達評価法の具体的再検討を進めていきたい。 平成9年度中は、乳幼児用発達テストとして標準化されている認知発達テストと利き手課題の検討を行い、日本国内での標準化テストがないため輸入版のテスト課題を検討した。日本国内では、現在までのところ、認知発達・運動機能発達・運動の偏側性については、少数の被験児による実験的報告がなされているのみであり、集団健診の場でのテスト構成にふさわしい方法が吟味されていない。研究計画では平成9年度中に本実験に入る予定であったが、本年度は準備段階での実験的検討に多大な時間を要した。今後さらに実験時間短縮のための課題選択と構成を行い、平成10年度中に本実験を行う。
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