研究概要 |
1歳半から3歳半までの初期言語発達期の利き手に関する調査的研究を行い、利き手の出現と性別が、記号的機能の出現にいかに関わっているか検討した。この研究の中間報告をまとめた(島根女子短期大学紀要,第37号,P59〜70)。被験児を追加し、結果の追跡調査を平成11年度中に行う。中間のまとめの結果は以下のとおりである。 利き手の測定については、主にCrovitz&Zener,1962:Annett,1970;0ldfield,1971らの質問紙に採用されている項目について、親の面接による測定と、実際の子どもの行動観察からの測定の2つの方法で利き手指数を測定し、低年令児での利き手測定の妥当性を検討した。18ヶ月児36名、30ヶ月児36名の調査の結果、親の報告による利き手指数と観察の利き手指数は、r=0.81で強い相関を示した。観察利き手指数のLQ60以下を非右利き群、60を越えた者を右利き群とした場合、親報告と観察による利き手の群別けは一致率80.5%で高かった。低年令児の利き手測定の高い妥当性が示された。 親報告と観察によるLQと言語獲得段階の得点の連関を検討した結果、生後30ヶ月児では有意な相関はなかったが、18ヶ月児の場合、観察値LQと言語得点にr=0.693(p<0.0001)、親報告LQと言語得点にr=0、606(p<0.0001)の実質的な相関があった。観察値のLQによる利き手群と性別群の言語得点を分散分析した結果、18ヶ月児の言語得点の利き手差力有意であり(p<0.05)性別が有意であった(p<0.05)Scheffeのテストの結果、右利き群が有意に高い得点を示し、女児群が有意に高い得点を示した。デンバー式スクリーニングの基準で18ヶ月児レベルの語彙獲得の遅れを示す者が、右利き男児に1名、非右利き男児に3名あった。観察による利き手測定値が、言語認知発達との連関を測定する上でも有効であることが示された。 この中間のまとめは、日本発達心理学会(平成11年3月28日)で発表した。
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