本研究は、日々動いている学級の現状を踏まえたオーダーメイドな学級支援によって現場教師の学級および不適応児を含めた子どもへの対応を援助することを目指して計画された。具体的には、継続的調査の実施によって学級集団の客観的特性およびその動きを把握する活動と、生の学級に直接触れるための学級の日常への参加・観察活動を両輪として実施された。主な対象は公立小学校1学級で、平成9年度(当時3年生)から平成12年度(6年生)にかけて約3年8ヶ月にわたり学級に関わった。その時々に発生する学級や児童の「困ったこと」に対して、調査によって明らかになった仲間関係構造および担任教師の指導態度や学級風土についての児童の認知特性を視野に入れて、担任教師や他の学校関係者との話し合いを続けながら対応を提示・実施してきた。また、児童の不適応の問題もその児童の学級での普段の様子、教師や仲間との相互作用の特性などを踏まえた理解が不可欠だと考え、児童との直接的関わりも含んだ授業時間や休み時間への関与的観察を行いながら、実状に即した理解と対応に努めた。本年度は、継続的な調査(ソシオメトリック・テスト、学級風土調査、メンタルヘルス・チェック、担任教師の指導態度等)と学級観察活動をさらに充実させ、昨年度秋頃から荒れの徴候が現れ危機に見舞われた学級への支援を続けた。ここでは、教師と児童の思いや願いのズレにいち早く気づくために客観的な調査データが大変有効なこと、普段の教師と児童たちとの自由な関わりの密度が学級の底力に影響すること等が明らかになった。そして、日常的な学級参加によって気になる児童への筆者の個別支援がスムースに行われた。本研究の成果は心理学と教育現場の新たな連携の形について示唆するものであり、『学級の機能不全の回復』に向けてさらなる活動を継続したい。
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