研究概要 |
学習障害児とは知的には正常ではあるが,ある能力だけが特異的に障害されている児童である.文部省から1995年に出された中間報告では,学習障害の背景には神経学的基盤があると推定しているが,その科学的根拠はまだ明確ではないと思われる. 本研究では,学習障害児の大脳機能低下部位の局所血流と認知神経心理的症状の継時的変化(改善)について検討することが目的である.対象は,全例頭部MRIにて局在性の病変を認めないで,かつ認知神経心理学的症状として特異的症状を呈した学習障害児である.全例全般的な知的機能は正常である.内訳は,漢字のみの書字障害を呈した特異的漢字障害例3例,仮名漢字ともに読み書き障害を呈した1例,言語特異的意味理解障害児7例である. 初年度としての本年度は,第一時点での評価年度であり,上記のうちの9例について認知神経心理学的および局所脳血流量の解析を行った.その結果,特異的漢字書字障害2例での局所脳血流量に左右差の認められた低血流量共通部位は左側頭葉であり,特異的読み書き障害児では角回を含む左頭頂葉と左側頭葉,言語性特異的意味理解障害児では左側頭葉を含む広い領域であった.この結果は,症状が類似している後天性の局在病変を有する成人例での漢字失書例,失読失書例,語義失語または超皮質性感覚失語例の責任病巣の場所に類似していた.また,高次の運動障害を定量化するために,自家製の機器システムを作成すべく,機器を購入し,接続したが現在刺激プログラムを作成中である。2年目としての来年度は上記症例に加えて第1時点での検査を行い,さらに症例によっては第2時点の認知神経心理検査と局所脳血流量の測定を続行する予定である.
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