1.1997年9月10日から20日まで、イギリスとスウェーデンに於いて、当該研究についてのレビューを受けた。当初の計画に加えてスウェーデンへ出張を行ったのは、高齢者のケアの公的責任を第1義的に追及してきたスウェーデンにおいては、後期高齢者割合の増加による介護ニーズの高まりと財源問題の調整手段として家族ケアのあり方への注目が高まっており、調査研究も活発化してきた段階だからである。そこでは、人々の予想を超えた量的・質的な家族ケアの比重の大きさが明らかにされた。スウェーデンの家族ケア研究の主たるイシューは、家族、国家、市場の役割分担のあり方である。これに対しイギリスにおいて1980年代に家族ケア研究をリ-ドしてきたのは、家族=女性=介護の問題構造を指摘したフェミニスト研究であった。その中で介護のジェンダー関係をめぐるモノグラフ的調査が蓄積されている。これらの研究は、家庭内部の介護関係が中心であったが、90年代初頭のコミュニティ・ケアか改革に伴い、ケアシステムの変容や政府のケア政策における家族介護の行方を問う研究も蓄積されてきていることがわかった。 2.国内では、家族介護の類型の析出を試みた。函館市におけるホームヘルパーの派遣先が対象である。すでに、夕張市と札幌市のサンプルで夫婦間介護のモノグラム調査を行っているので、次年度は函館市のサンプルでその他の介護関係も含めた調査研究を行う予定である。家族介護の類型毎の、介護をなりたたしめている要因分析や家族ケアと公的・専門的ケアの関係分析の中に、イギリスやスウェーデンの研究の視点をいかすことができる、と考える。
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