研究概要 |
高知県十和村と北海道女満別町の農村文化の比較研究は地域的比較というより,日本農村社会の現在の文化状況の二つの状態を明らかにすることとなった。一方は民俗文化を中心とする日本の農村文化の原型,他方は日本の農村社会において民俗文化を醸成することが出来ず,都市的文化を区別することなく取り入れていった農村社会という,日本の農村の地域的特性の二つの典型を取り上げる結果となった。勿論,前者が日本農村の文化形態としては多数を占めるが,現代の農村社会の変容から女満別町のような音楽を主体とするような文化形態を持った農村が本州府県においても出現している。そうしたなかで,伝統的民俗文化の村が過疎化,山村の社会崩壊等で民俗の文化を含む,村の文化がどのようになっているのかをまず明らかにした。かっての 村の精神"を生み出した民俗の文化が,人がいなくなり,農林業が廃れていくなかで消えていき,文化の空白状況が生じている。 しかし,北海道にあらわれた村は,町の文化行政を主導として農村社会において新しい芸術・文化を育てようとする試みである。産業一社会一文化という基本的な社会構造の新しい姿を,そこにみることができた。 二つの農村社会の比較研究は,現在の日本農村社会の異なる現実の姿である。
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