ルーラル・ツーリズムについて、実証的な研究を行なうことが課題であった。特に、中山間地域の活性化という課題は、不況下においてますます重要な政策課題となっており、こうした文脈においても多くの地域において取り組みがみられる。具体的には観光やリゾート、その他レジャーに関する開発事業が多様に展開されてきているといえよう。 地域の活性化という問題関心から、まずは以前からフィールドとして着目してきた岩手県の安比高原スキー場において農村社会学的な調査を実施した。安代町の行政担当者、安代町農協の担当者、およびスキー場近傍の細野地区において聞き取りを中心に情報の収集に当たった。全体としては構想的不況のもと、スキー場や民宿への入り込みは3割程度減退しており、また岩手山の火山活動をめぐる風評も付加的要素となり、経営は苦しい情況にある。また、農業をめぐる情況も天候不順による花卉栽培の不振をはじめ、タバコ、コメ、野菜、畜産のいずれもが伸び悩んでいる。しかし、このようななかでも、「グリーン・ツーリズム」への動きもみられ、いまだ小規模とはいえ、農家が自立的に夏場の誘客に取り組んでいる例も観察された。 東北の農村と比較するため、沖縄県石垣市においてもツーリズムの情況を調査した。特に、北部の明石集落に注目し、主要には「リゾート開発」をめぐる歴史的経緯を中心として聞き取り調査を実施した。石垣島では観光客の入り込みという点では増加傾向にあるといえるが、開発のための用地買収が本土以上の激烈さで進行したという特徴が見いだされた。環境保全の問題もさりながら、農業とのバランスをどうとるのか、農民の新たな模索が展開している。
|