1.本年度も交通産業(広島電鉄)を調査対象とし、労働時間短縮による労務管理の変化、従業員の勤労意欲の変化についての聞き取り調査、従業員意識アンケート調査を行った。 (1)3年前の変形労働時間制(通算制)の導入によって労働条件は激変し、従業員の間から大きな不満が出てきたが、昨年、今年と、職場における勤務ダイヤ編成の協議によって、労働条件が徐々に修正されてきている。それにともなって、従業員の勤労意欲も徐々に回復の兆しがみられるようになってきている。 (2)この職場協議を通して、組合職場組織の交渉力が回復してきている。その過程を通じて、職場段階においては、新たな労使関係の動向が見られるようになってきている。 2.本年度はとくに同社が昨年来、進めている「分社化」が、労務管理や従業員の勤労意欲に与える変化について、重点的に聞き取り調査を行い、次の事実が明らかになった。 (1)「分社化」によって電車、市内バス、郊外バスが別会社となり、経営側は収益性に応じた賃金制度を進めようとしている。これに対して組合側は従来通りの統一賃金制を主張しているが、雇用か賃金かという選択にも迫られている。経営側・労働組合の段階では、新たな労使関係の創出に向けた緊張関係が続いている。 (2)聞き取り調査、アンケート調査によれば、職場毎、年齢毎の意識の相違が徐々に開いてきており、机上勤務職場、若年齢層に、収益性に応じた能力給を要求する意識が拡大してきている。このことが、今後の労使関係にどのような影響を与えるかが注目される。 (3)経営側は1部の路線を別会社で運営することとした(分社化)。従業員は新規に採用されており(全員がパート雇用)、この面でも労使関係は緊張の度を加えている。
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