本年度は、昨年度に引き続き、山形県米沢市、高畠町を研究対象に、主題に沿って、第一に、主要な関連団体等の代表、担当者と面談し、事実経過を確認し、状況把握、今後の構想などについて、お話を伺い整理した。また、各地の公的図書館などで関係資料を収集した。地域発展の状況を把握するため、米沢、高畠の各集落の農業生産や就業の状況について、農業センサスを利用して、いくらかの整理検討を行った。観光客等の意識や行動について、現地の状況に合わせて把握する作業を今後ともさらに進めたい。海外文献も含め、地域の内発的な発展、観光産業、地域開発関連の文献をさらに収集し、昨年のものとあわせ、検討を加えている。 一定の工業化水準を示す米沢市にあって、伝統的な文化遺産、郊外の保養リゾート地は、都市としての風格や市民の誇りに通ずる地域資源また観光資源であり、今後の都市発展において、その重要な役割が期待される。近年、米沢市においても都市商業機能の一定の衰退がみられるが、これらの存在は都心再生の貴重な素材となりうるものである。市では、都心街区において面的な景観整備を展開し、旧来の印象を一新しつつあるが、一方で郊外化の動きもとまっておらず、都心再生にはさらに工夫が要請される。高畠町は、有機農業の拠点として全国的な認知があり、農業体験、都市農村交流の場としても期待されている。町は、一定の工業化を進めながらも、農業をあらためて全町的な認識のもとに地域の基礎産業として位置づけ、新たな意義を付与し、観光産業との接点を確保し、農産物加工などの地域産業形成に結びつけつつある。豊かな自然環境と農村景観を観光資源として生かし、地域経済の発展につなげていくために、農業生産とその生産環境の維持が有効であることを示している。さらに、置賜地域の広域的な社会再形成をどう構想し連携するかが、両市町の今後を左右する課題である。
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