本年度(初年度)の前半は、文献調査ならびに資料収集を行った。データベースからキーワードで検索したアメリカのPh.D.論文や新刊の研究書を中心に、合計で30点あまりを取り寄せた。これらは、95年以降の学界における社会学、政治学、哲学などの分野における権力をめぐる研究の最新の成果を網羅するものである。 本年度の後半は、これらの資料を整理・読解し、これまでに私が展開してきた議論と対照した。その結果、ウェーバー、ダール、ル-クス、ル-マン以来の権力概念の定式化に部分的ながら修正すべき点があることが判明し、私の概念構成に一部変更を加えた。この変更は、執筆中の著書『<言語>派社会学の原理』の原稿に盛り込まれており、平成10年度に洋泉社から刊行される予定である。 資料の整理にもとづいて、権力理論の再構築の作業も進みつつある。その一部は、上掲書に盛り込むほか、筑摩書房から刊行予定の『権力論』の草稿に書きためられている。これらの成果は、平成10年度以降に順次公表される予定である。
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