本研究は、職務のジェンダー間分離の実態調査研究を通じて、労働過程のジェンダー研究に関する方法論の構築をめざしているが、本年度は主として来年度の本格的な実態調査にむけての準備に取り組んだ。 まず第一にジェンダー視角からの労働研究に関する文献サ-ヴェイを行った。日本における本格的研究が手薄であるため、英米の文献を中心に収集した。来年度もひき続き取り組む必要がある。 また来年度の実態調査に向けて、流通業界の全体的動向を押さえるなかから、スーパーマーケットを調査対象として絞り込んだ。スーパーマーケットを選定した理由は、性別分離が学歴別分離と重なるかたちで、男性は管理業務担当をめざして店舗内のあらゆる雑多な業務を行い、女性がレジのチェッカーを担当するという実態がある。しかし大卒女性の採用が進むなかでこうした性別分離に流動化現象が起こりつつあるという点から、興味深い研究対称であると思われるからである。またパート活用という点では先進事例が数多くみられことから、ジェンダーのみならず世代(年齢集団)を加味した職場内の分離構造および流動化の行方をフォローすることができるという点で適切な対象であるといえよう。したがって今年度は、スーパーマーケット業界のなかで特徴のある主要な企業を選び、人事を中心とした聞き取り調査を実施した。地域的には関東、関西、東海、東北にまたがっている。来年度はこうした聞き取り調査を続行し、調査対象企業を具体的に選定してインテンシヴな実態調査にはいる予定である。
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