新潟県燕市における金属製品流通業(産地では「金物卸業」)は、引き続く景気低迷、とりわけ国内需要やアジア経済の低迷によって「不況感」を強めている。当産地の金属製品流通業は、海外輸出に特化した業者と国内需要(デパート等高級品卸、量販店流通、その他)向け業者に大きく分けられるが、最近ではこれに加えて諸外国の金属製品輸入に重点を移す「金属卸業」が増大する傾向を見せている。とりわけ、量販店流通を専門とする流通業者は、生き残り戦略として燕産地の金属製品と競合する金属製品の輸入販売を余儀なくされている。質問紙法調査及び聞き取り調査によれば、「既に輸入実績がある」業者は24%、また「今後の輸入準備をしている」と「今後輸入したい意向である」は合わせると25%であった。また、輸入の理由(複数回答)について尋ねたところ、「価格面での優位性」が約80%、「国内では得られないデザイン、品質の優位性・特異性」が約30%、「同業者・取引先からの紹介」が30%となっている。また、輸入品の形態としては、「完成品」の輸入の内20%が「作業工具」、14%が「金属雑貨」、10%が「演芸用品」となっている。輸入相手国としては、「台湾」が56.3%、「中国」が39%、「韓国」が33%、「アメリカ」が16%の順となっている。今後の輸入の見とおしとしては、「横ばい」が58%、「拡大」が30%、「縮小」が7%となっている。つまり、アジアを中心として「横ばい」傾向を示している。 当産地の金属流通業者は、従来(1)製品ニーズの情報、(2)製品開発の情報、(3)経営情報等の収集機能をもっていたが、今や国内量販店の市場支配力の増大や海外バイヤーの圧力、長期「消費不況」、アジア経済の低迷など多様な問題を抱えながら、自立化の傾向を深めていると言える。
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