研究概要 |
本研究の目的は、地域に伝承され現在も活動中の伝統文化(地方歌舞伎)を、表出的文化としての歌舞伎演劇の地域的「変形」として捉え、その社会的・文化的な特性および機能を明らかにしようとするものである。具体的には香川県小豆郡土庄町肥土山地区(平成9年7月1日現在、289世帯、900人)K300年にわたって伝承されてきたといわれる「肥土山歌舞伎(ひとやまかぶき)」を対象とし、地方(農村)歌舞伎の生成・持続・変容の過程、および、その社会的・文化的機能について調査研究する。今年度の研究実績の概要は次の通りである。 1. 肥土山歌舞伎の舞台や桟敷(およびその利用方法)、講演までの準備日程等を観察・調査するとともに、平成10年の恒例講演(5月4日)を観劇することによって、肥土山歌舞伎の二重性(宗教的・民俗的側面と演劇的・娯楽的側面)についての知見を得た。 2. 肥土山歌舞伎の直接の担い手である「肥土山歌舞伎連中」の3名へのインタビュー、ならびに、基礎的な担い手である地区住民へのアンケート調査を実施し、不十分ながら、肥土山歌舞伎に対する担い手の態度や考えの一端を把握した。 3. 肥土山農村歌舞伎保存会長、肥土山農村歌舞伎後継者育成会長、肥土山自治会長からの聞き取り入手資料を利用することによって、地区の6つの「組」による輪番制運営、今後の継承可能性、自治会の実態などについての一定の知識を得た。 4. 農村歌舞伎の「一般的特性」(平成9年度の調査結果の一部)に基づき上記1,2,3の結果をまとめることによって、肥土山歌舞伎固有の構造や機能を明らかにし、文化、とりわけ伝統文化における「分化的要因」と「社会的要因」の相互連関について文化社会学的見地から考察した。
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