本研究の目的は、明治末からゴム靴製造、マッチ軸工場、造船業を中心とした工業地域として発展を重ねてきた神戸市長田区を中心とする地域に住む奄美地域出身者や在日韓国・朝鮮人などの都市マイノリティ層が阪神・.淡路大震災で被災した中でどのような生活復興を果たしていったかを明らかにすることにある。 昨年度は、奄美地域出身者や在日韓国・朝鮮人などの同郷集団や民族集団の活動や、これらの団体に関わる人々の生活史などの聴き取りや地域資料の収集を行ない、これらの住民の特質や地域形成の特質を明らかにした。本年度もこれらの調査を継続するとともに、こらの住民の震災被害やそこからの生活復興について、奄美地域出身者の同郷団体である神戸沖洲会の震災時における生活対応を事例的に明らかにした(西村雄郎・国場壱子「震災と同郷団体」岩崎信彦『阪神大震災と社会学』昭和堂1999年2月)。 さらに、本年度はこれら都市マイノリティ層が形成されていった歴史的経緯を大阪市、神戸市を中心とする近代阪神都市圏都市形成過程との関わりの中で明らかにすることを目指して調査、資料収集を行なった。また、奄美出身者の出郷構造を明らかにするため、鹿児島市および奄美地域における資料収集をおこなった。 これらの調査、資料収集を通して奄美地域出身者や在日韓国・朝鮮人といった都市マイノリティ層が近代日本資本主義の構造的な特質のなかで現れた存在であること、またこれらのマイノリティ層の中にも構造的な格差が存在していることが明らかになった。
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