本研究は、産業都市における生活環境の創造に、企業がどのように関与しているかを明らかにすることを第1の目的にしている。多くの産業都市が産業公害を経験し、その克服過程において、企業の社会的責任や企業努力と、行政、学識経験者や研究機関、および地域住民の取り組みがなされてきた。その過程を実証的に分析しながら、コミュニティとアソシエーションの今日的関係を明らかにするところに、社会学的な意義がある。 研究はまず第1に、わが国の地方自治体として、国連環境計画(UNEP)から、環境問題に対する活動が評価され、「グローバル500賞」を受賞した北九州市(1990年)、四日市市(1995年)、宇部市(1997年)において、環境浄化にかんする産・官・学・民の取り組みを比較検討した。 第2は、企業の社会貢献活動に焦点を当て、宇部市における地場企業の100年にわたる貢献活動の歴史的経緯と、防府市における進出企業の呼びかけに端を発した企業連携による新たな貢献活動を比較し、コミュニティにおける企業市民性の可能性を追求した。 第3は、地域社会の生活環境の重要な担い手である地域住民が、どのように環境問題に取り組んでいるか、さらに企業の社会貢献活動をどのように評価しているかを明らかにするために、北九州市、宇部市、防府市で環境市民団体調査を行った。 その結果、環境問題への取り組みが一定の成果をあげるためには、まず第1に産・官・学・民の連携、第2に、企業の地域社会との協調的繁栄を求める姿勢、第3に、地道な市民団体の活動、が存在することが明らかになった。さらに、企業の立地過程を異にする地域社会には、固有のコミュニティとアソシエーションの関係が存在し、企業の社会貢献活動がコミュニティの生活環境の創造に大きく関与していることが明らかとなった。
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