初年度の平成9年は、AHP(階層構造分析)による、東北地方の農村の豊かさ観の事例分析のまとめと、宮崎の農村女性の集会において、農村地域の豊かさに関して、どの様な豊かさを持っているかの調査を行った。 事例分析では、豊かさ観は、豊かさを「自然」、「家庭生活」、「農業生産」、「交際」などの項目に表現されるような特徴を持ったものであった。これは、従来の豊かさ観が主として所得、財産、等で表現されてきていたのに対し、新しい豊かさ観である。豊かさの分析は、これら4項目を用いて一対比較分析により、その地域の住民が、どの項目をとくに重視しているかを把握した。それによると、住民が最も重視している豊かさの項目は「家庭生活」であることがわかった。この家庭生活の中で、さらに、下位の項目を見ると、「新鮮で、安全な食べ物が得られる」や「子供を育てるのによい環境」の項目の評価が高いことが判明した。農村生活の中での豊かさの評価として、「家庭生活」の重視度が高く、その中でも「食生活」、「子育て」が豊かさのポイントとなっている。この食と育児の基本は家庭にあり、それの充実感、あるいは、現実に実行できていることへの満足感の意味が込められているといえる。特に、「食生活」に関して、「自分で作ったものが食べられる」や「農家であるから自給できる」、「作物の安全性」、「新鮮さ」などの点に豊かさを意識している。「子育て」に関しても「子供と話し合う時間が多い」や「子供と共通の話題がもてる」「子供と一緒に仕事ができる」等の点が評価されている。 宮崎の農村女性の「豊かさ観」は、豊かさのモデル的項目としては、「ゆとり」、「健康」、「自然」、「交流」、「家族」、「自給生産」、「自由な時間」等があげられていた。これらの項目を整理して、一対比較の調査票を作成し、宮崎の都市近郊の農村地帯の住民、山村地帯の住民、中山間地帯の農村の住民それぞれの、地域の特性に応じた豊かさ観が見られるか否かを調査によって把握していく。それぞれの地域の特性が出れば、地域の特性と、豊かさ観との関連性をとらえる。また、地域とは無関係に、豊かさ観が見られるならば、そこに、豊かさ観の共通性の存在を確認できる。
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