この研究の目的は、豊かさに関しての地域住民の主観的意識、主観的評価を把握し、主として主観的評価に基づいた地域社会の豊かさを評価することにある。 平成11年度の研究は、9年度から10年度にかけて行った地域住民に対するAHP(階層構造分析)による豊かさ評価調査の分析を行った。調査は、宮崎県の農業地帯を対象地域として行った。農業地帯をさらに、都市近郊、中山間、山間の3地域に分け、それぞれの地域の住民を調査対象者とした。実際の調査は、それぞれの地域で開かれた集会参加者に調査票を配布し、記入後郵送してもらう方法で調査した。調査票は、まず、豊かさに関しての認識を把握することから始めた。把握した豊かさの項目を類型分けし、それを基にAHPによる調査票を作成した。豊かさの認識調査から、豊かさを「自由」、「安全・安心」、「公正」、「快適」の4項目に分け、それぞれの項目をさらに4〜5の項目に分け、それぞれ2項目ずつ、一対比較を行い、どの項目の評価が高いかについて調査を行った。 分析は東北農試開発のAHPプログラムによって分析した。分析結果によると、都市近郊や山間地域に関わらず、「安全・安心」の項目の評価が高いという結果がでた。さらに「安全・安心」の下位項目の評価をみると、「家族で支え合って暮らせる」という項目の評価が高い結果がでている。 今回の調査は、AHPによる階層3までの項目分析であった。これをさらに下位の階層分析を行うことにより、豊かさの内容を細かく把握することができる。また豊かさの項目を、今回用いた4項目だけではなく、別の豊かさ項目を用いて調査することにより、豊かさに関してさらに有効な指標を見つけだすことができるものと考える。
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