平成元年度の科学研究費補助金による本研究から8年が経過し、その後の少年非行統計は「万引き」も含めて平成7年度まで漸減傾向にあり、平成8年度以降に漸増傾向を示している。この統計化プロセスと「大型店舗における万引き」との関係を解明する上で、本年度の調査研究等で明らかになった事実は次の通りであった。 1.これまでの調査対象地域(東京23区・京都市・岡山市・鹿児島市)における追跡調査では、百貨店で少年の万引きが激減し、結果的に中高年の割合が急増していること、大手スーパーで系列警備会社による画一的処遇が徹底して資料の保存が短期化していること、新たな調査対象地域(札幌市・那覇市)では大型店舗がまだ万引きの場になっていて、特にスーパーや専門店への「場の移動」が進んでいることである。 2.当該地区の警察機関への聞き取り調査については、警察の担当部署の協力を得て「調査票」の作成を行ない、一部の地域で調査を進めているが、警視庁の「簡易送致事件」判断の基準に概ね準じた処遇が行なわれ、また簡易送致以前の「署限りの措置」が統計化に大きく影響する事実も見受けられた。昨今の少年非行報道がこの措置を減少させることが十分予想される。 3.さらに、各都市の店舗・学校・警察の連絡指導組織のあり方の変化も特徴的であり、「早期発見・早期治療」方針と「人権擁護」の配慮のバランスの変化が見受けられた。 4.今後の研究の展開に関する計画としては、平成10〜11年度予定の補助金配分にもとづき、(1)平成10年まで3年間の各都市の大型店舗における実態を調査整理する、(2)同じく当該地区の警察に対する聞き取り調査を進めて「措置・送致」の実態と傾向を捉える、(3)平成11年度に調査報告書を作成して論分化を検討する。
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