まず、アメリカの老人学や行動療法の雑誌のなかで、行動療法を用いた老人の介護の報告を取り上げ、そのなかから研究動向をさぐることにした。その結果、調査報告は、(1)先行刺激による処遇、(2)随伴性刺激操作による処遇、(3)パッケージによる処遇、に分類されることが分かった。 このような文献の傾向を踏まえて、特別養護老人ホームで生活する87歳の女性の老人の言語的表現の増加を目標に介入を行った。この老人は施設で生活を始めた頃は、他の入所者や施設スタッフと日常的会話もみられたが、最近、この老人には、言語的表現がほとんどみられなかった。もしも彼女に言語的表現がみられたとき、介入者は、随伴性刺激として、言語的賞賛と身体的接触を行った。その結果、6か月後の介入後、以前よりも、彼女の言語的表現数が増加した。 この事例から、老人の言語指導などには、行動変容アプローチが役立つことが分かった。
|