個人主義化を、制度化された役割に対する再帰的態度としてとらえ、東京都内の高校生と、北九州市内の高校生とを、それぞれ4校づつ「偏差値レベル」ごとに分け、学校規範や社会的価値に対する態度を中心に、比較調査研究を行った。集計の結果を総合すると、地域別による学校内外の行動や価値意識、メディアに対するアクセスの差は、学校の統制の仕方に差異に起因するもの以外には見られなかった。地方都市の文化的「都市化」が進むに連れ、東京と地方都市の若者における意識の差はなくなりつつあることが分かる。行動や意識の差はむしろ、学校の偏差値レベルの差によるものが大きく、学校の「偏差値レベル」が高ければ高いほど、社会的規範、集合的(共同体的)規範に対するコミットメント度が高く、「偏差値レベル」が低くなるほど、集合的規範に対するコミットメント度が低くなり、アノミックな態度性向が多く見られた。すなわち、高校生の行動や意識は、「偏差値レベル」が規定する(あるいは将来の進路をそうていした個人的戦略が規定する)学校文化と関係がある。補足的に比較した時系列的変化からは、全体的に高校生のアノミー化傾向(集合的価値からの離反)が多く見られた。また、外国の高校生と比べても日本の高校生のアノミックな特徴が見られた。現在における日本の若者の意識は、市民的社会参加原理を欠く傾向を持ちつつ、集合的(共同体的)な価値からの離反に特徴づけられる。そういった意味において、「功利主義的」な個人主義が日本の若者に浸透しつつあるといえる。
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