研究概要 |
本年度は,高度情報化社会における若者のコミュニケーションと社会化の問題を明らかにするために,主に二つの領域に関して研究を実施した。第一は,高校生と大学生を対象にして「若者の生活とコミュニケーション」調査を実施したこと,第二はわが国における青年の社会化の問題を実業教育の展開過程に位置付けて検討したことである。 1.高校生調査の主な結果を紹介する。情報化に関しては,メディアや情報に対しては意識としては距離を置く反面,メディア(情報)の環境化が進展しており,情報受容は娯楽志向であること,パーソナル・コミュニケーションにおいては、自己中心の欲求構造や、他者との軽いコミュニケーションが支配的であることなどが指摘された。社会化に関しては,領域によって友人,家族,学校,メディアなどと,依存するエージェントが異なっていることが明らかになった。 2.わが国の産業化初期,八王子町および川越町のそれぞれの徒弟学校(染織学校,のちの工業高校)においては,地元の染織業を引きつぐべく,生徒たちは懸命に勉学し学習した。明治・大正期の生徒の意欲等については,文献によって調べるよりほかないが,それ以降昭和の戦前期,戦後期の生徒の動向は同窓会の記録によってフォローした。地域の産業が染織から機械産業へと高度化するにともない,両校とも学科を多角化したが,産業化(とくに軍需産業化)にはどうしても十分ついて行けず生徒たちにたえず不安定感を与えていたことが認められた。わが国の多くの徒弟学校(大部分が地場産業)と比較して「地域の産業化と教育」の関連がより明らかになった。
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