農山漁村における新しい信念体系の伝播・浸透・定着過程について、いくつかの地域と対象団体について、調査・研究を進めることができた。3年間にわたる研究は、文献調査及び面接調査によるデータ収集、データの整理、及び面接、考察とまとめの3段階になる。以下、研究によって得られた成果(知見や洞察等)について、箇条書きにてまとめる。 1.課題に関する基礎的概念規定関連の社会学的・宗教学的図書を集め、分析枠組みの基盤を形成し、かつ精緻化した。 2.農山漁村社会における新しい信念体系の伝播・浸透・定着を扱った論文や報告書を収集することによって、これまでの先行研究を把握することができた。とくに、宗教地理学的な文献にあたることができた。 3.千葉県安房郡千倉町大貫における日本聖公会安房大貫キリスト教会の聖職者および全信徒への面接調査を行い、主として宗教的信念体系の変容に関わるデータを得ることができた。 4.疑似宗教的信念体系を有するコミューンである幸福会山岸会の機関誌および先行調査文献の収集及び整理を進め、これをほぼ終了させた。 5.和歌山県有田郡金屋町役場における民俗資料および同町下六川地区の地域住民や住職への聴取り調査を通じて、地域社会の産業・人口構造および民俗や宗教の状況を把握することができた。 6.同町下六川地区のヤマギシズムの六川実顕地の参与観察、文献資料収集および幹部会員への面接調査を通じて地域社会にとっての新しい信念体系の伝播・浸透に関連するデータを集めることができた。 7.収集した資料を整理、分析し、ヤマギシズムが蜜柑農業地域に浸透しえたおおよその社会学的要因を析出することができた。 8.上記については、なお、若干の補足調査が必要であり、研究成果報告書で記述しえなかった部分も若干残されており、今後の課題としたい。
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