研究概要 |
本研究の中心的な課題は、平成9年度の実績報告書で示した通り、都道府県別、市町村別の人口動態統計を基に自殺率を「高く」もしくは「低く」する要因を探り、自殺防止(予防)の方法について検討することである。具体的には、自殺率は地域により異なった値で出現しているが、この自殺現象を地域の集団現象と捉えた場合、地域により見られる自殺率の差異は、地域の性格、すなわち地域社会を構成する社会的要因の差にあるのではないかという仮説のもとに、自殺率が地域を構成する社会的要因とどのように関係するのかを明らかにすることである。なお、研究期間は平成9年度〜平成12年度までの4年間である。 そこで、平成9年度、10年度、11年度の3ケ年間は、主として各都道府県に出向き市町村別の30個の主要社会指標(人口学的、経済的、交通事故並びに刑法犯認知件数、疾病および死亡原因、平均寿命等)の収集とその整理、並びに市町村別の「自殺の標準化死亡比=SMR」の算出に多大な時間を費やした。平成12年度は、主として分析検討を行なった。 最終的には17県(1,191市町村)を対象に、多変量解析による記述モデルの一つである主成分分析、並びに重回帰分析を行い検討した結果、以下の点が明らかになった。 1.SMRを規定する要因としての財政、並びに社会的要因には、(1)地域の経済や財政基盤の弱さ、(2)過疎化により日常生活に必要な生活手段の確保の困難さ。2.SMRの地域差(分布)を規定する要因には、(1)過疎化、老齢化の要因が顕著で、かつ都市部から距離的に遠い郡部で、しかも他県との県境に位置する地域。(2)財政基盤が弱く、雇用や生活手段の確保が困難等の社会的要因。(3)社会移動による人口減少地域。3.SMRの背後にみられる死因構造には、主要な3因子が考えられた。4.自殺防止には、以上の要因を払拭するための施策を国レベル、地方レベルで取り組むこと。
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