本研究は、越境のニューカマーズ・アジア系外国人の受容と変容の著しい東京大都市圏の周辺市街区=インナーエリアを磁場として、面接調査を中心としてアジア系外国人の生き方とネットワーク型コミュニティ生成を実証的に分析した成果である。研究代表者は新宿・池袋のニューカマーズの面接実態調査を継続的に実施しているが、平成9・10年度の研究成果を阪神、北九州大都市圏の「在日」コミュニティの既成の調査成果と比較検討するとともに、やはりアジア系ニューカマーズを大量に迎え入れたアメリカ大都市コミュニティの変容過程との比較分析の枠組を提供した。 1. 共通のテーマは、ニューカマーズの能動的生きかたと都市的適応様式を、ネットワーク型コミュニティ生成の観点から、比較都市社会学的にモデル化することにある。 2. 平成10年度は新宿・池袋について130サンプルの面接調査成果が得られたが、そこでは、 (1) ニューカマーズとニュー・ニューカマーズとの連らなり。 (2) ニューカマーズの“オールド・レジデンツ"化;i)単身者主義からの離脱、ii)隠れた日常生活圏-都市空間、iii)結び合うかたちとしてのネットワーク型世界-「定着の論理」から「生成の論理」へ、伝統型エスニック・コミュニティ(所謂Urban village)から生成力としての生活空間へ。 (3) 新しい市街地空間としての「エスニック・タウン」;i)エスニシティと交錯するスモール・ビジネス、増殖するエスニック・ビジネス、ii)越境の「文化、資本、エスニック・ネットワーク」回路と結ぶ、iii)World CityからWorld Townへ。 の諸点が実証的に解明された。本研究の主題を20世紀システムの「都市成長・発展シナリオ」ではなく、21世紀システムにむけて「都市衰退・再生シナリオ」で読みとく作業が今後に残されている。
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