1。在日コリアンの日本への移住歴史、さらには、日本社会での生活史についての聞き取り調査を行った。その結果、戦前の移住者のばあいにおいては、10歳代後半に移住し、様々な職種を遍歴しながらも、必ずしも日本社会での定住を志向するものではなかった。しかし、戦後の朝鮮社会の混乱などにより、日本社会への定住を求めるようになっていった。一方、戦後の移住者は朝鮮社会の混乱を逃れ、定住を求める者、出稼ぎ的移住など多様な形態があることが判明した。 2。日本社会に長期にわたる定住が予測されるようになり、日本社会での在日コリアンのネットワークの形成、さらには郷里とのネットワークの維持が課題として登場してくる。それは、ひとつには親族会の創設、またひとつには同郷里の出身であることを媒介にした郷友会などの組織化が1960年代から活発になっていく。それらの組織は生活相互扶助の機能を持つとともに、日本会での朝鮮式伝統的先祖祭祀を支える基盤ともなり、さらには郷里での先祖祭祀を橋渡しする機能を持つようになっていることが明らかになった。 3。一方、2世、3世が日本社会に定住していくようになり、先祖祭祀、死者祭祀の維持が大きな課題となっていく。それは郷里での墓地の維持、祭祀、また日本での墓地を求める動きなど、様々な対応に迫られている。今年度の調査では上記の1と2についての調査、さらに郷里である済州島での先祖祭祀の実態について済州大学の研究者との情報交換を行った。
|