1. 在日コリアン家族における先祖祭祀、死者祭祀の実修の実態について在日親族会、郷友会会員家族への聞き取り調査、参与観察、墓地調査を中心に実施した。 2. 1970年代に入り、母国への帰国が自由になり、それに伴い墓参、さらには、父母、祖父母などの墓の整備、親族共同墓を設けることが多くなってくる。それはひとつには政府の方針によって耕地を造成するためであり、またひとつは、社会移動の増大により、墓参が困難になってきて、一カ所にまとめ、祭祀を容易にするためでもあった。その資金は在日に多く依存している。その事例を「在日本コリアン社会と先祖祭祀」(玄石 権圭植博士 停年紀念論文集『宗教と現代社会』、玄石 権圭植博士停年紀念論文集刊行委員会発行 1998年4月所収)にまとめた。 3. 在日コリアンが今日先祖祭祀に関して直面している課題は、郷里の墓の祭祀をどのように維持していけるか、日本で亡くなった父母の祭祀をどのようにするか、自らの死後をどのようにするかというということである。それは死後子孫によって祭祀されることによって、安定した世界を確保しうるという世界観を保持しているがために生じている問題であり、祭祀そのものが民族性を表象するものであると認識されているからである。さらに2世、3世の日本への帰化の増大、日本人との結婚の増加、同化志向の強まりなどとがからみ、その問題は複雑化している。
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